シークエンスの源泉に、そっと「・(点)」を置く
舞台は、モダニズム建築の旗手である山田守が設計した4号館。初めて足を踏み入れた際、微曲線かつ四方に開く透明度の高いファサードにより、地方大学キャンパス特有の大らかな地形や空、樹々、学生の営みを借りて、どこまでも続いていくような広がりを感じた。 山田守といえば、分離派の一員として建築の芸術性を世に問うた一面もある。曲面を用いた造形的・官能的なデザインがしばしば取り上げられるが、その根本は、過去から分離し、垣根を越えて様々なものを受け入れるロマンチシズムな思想である。(と私は解釈している。)それはまさしく、前述した4号館の広がりある振る舞いであり、同時に、グローバルに展開する東海大学の学びの精神とも重なる。 そんな場所を図書館としてコンバージョンするにあたり、このシークエンスを遮る形式は相応しくないように思えたし、むしろ、身を任せるようにデザインすべきと考えた。そこで我々は、この建築からキャンパス全体へ広がるシークエンスを遡り、その源泉に絵の具を垂らすように、そっと「・(点)」を置く手法を試みている。 具体的にこの「・」とは、メインとなる図書室それぞれの呼称*、使われ方から想起される人の動き**から「island*=回遊**」「ocean*=往来**」「constellation*=錯綜**」「universe*=拡散**」と捉え、デザインされた書架群である。 「・」の先にある、環境や人の行為といった具象を受け入れるため、書架形態は抽象度が高く、図式的なものとした。この「・」が、それぞれが環境の機微を拾い集め、増幅させ、環境にムラを生み出す。そこには、1人になれる洞窟のような場所から、大人数で議論できる広場のような場所まで、多様な場が創出される。このように、源泉に置かれた色が滲んでいき、薄くなったり濃くなったり、違う色と混じったりしながら空間が彩られることを意図している。また、図式的な形態は、本を配架する上で分類がし易く、検索性も高く合理的である。 4号館が建設されてから半世紀を軽く超えた今、新たな姿となったが、山田守からはじまる根源的な思想は変わっていない。源泉から湧き出た水が長い旅をするように、本改修も決して最後ではなく、これからも続いていくのであろうし、続きがあってほしい。そんな希望を込め、タイトルの最後に「・」を打った。
- 種目:
- 改修
- 主要用途:
- 図書館
- 延床面積:
- 3,525.7㎡
- 階数:
- 地上4階建てのうち1,2階
- 構造:
- 鉄筋コンクリート造
- 施工:
- 山王総合、丸善雄松堂
- サイン:
- びこう社
- 撮影:
- 楠瀬友将、エスエス
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