量と質
豊島区雑司が谷に建つ、ルーフバルコニー付き集合住宅一室の改修計画。 広くもないし、お金もない。でも、私たちYERIMと[豪]にとって幸せいっぱいの[邸]=[雑司が谷の豪邸]です。 本計画の特徴として、ルーフバルコニーの存在があり、エントランスから「土間」で繋がれている。下足のままでも行き来できる自由度の高い場所であり、ルーフバルコニーがあるからこその生活が展開される。 また、この土間の取り巻くように様々な質量の素材を散りばめることで、陽や風といった環境の一挙手一投足により、それぞれが違う様相で空間を彩るデザインとした。例えば、タイルは、絶対的な変わらなさ・安心感があり、無意識に触れたくなるような、落ち着きを感じる対象である。それに対し、カーテンは風や光を纏い、環境の機微を楽しませてくれる。と言うように。 最後に、本件のような、首都圏・都心でルーフバルコニーのある部屋は希少である。 その背景には、現存する集合住宅の多くが、「量」の獲得を命題としていたバブル崩壊以降に乱立したものであるためだ。当時は「量」を得るため、コピー&ペーストするように空間を隙間なく積み上げる行為が社会的な「質」となっていた。言うなれば、「量の時代」である。 ただ、当時は「量」=「質」になりえたものの、供給の飽和やライフスタイルが多様化する現代では、その構図は成立しない。しかし、「量の時代」のものにも事業主・設計者の努力、法規・構造上の制約の副産物として、「質」は存在していることも少なからずある。 私たちが選んだ物件もそういった稀有なケースのひとつだ。ルーフバルコニーという「質」を取り込むことで、単一的であった「量」の空間を、「質」を孕んだ複合的な空間へ昇華させた。 これからの「質の時代」の可能性を、本計画で示せたのではないだろうか。
- 種目:
- 改修
- 主要用途:
- 住宅
- 延床面積:
- 59.41 ㎡ (+ルーフバルコニー 50.32 ㎡)
- 階数:
- 地上5階建てのうち4階
- 構造:
- 鉄筋コンクリート造
- 施工:
- (有)裕建築工房
- テキスタイルアドバイザー:
- 庄司はるか / Shoji Haruka Textile Atelier
- 撮影:
- 楠瀬友将
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